短歌31-40

31.

月の姫

彼は遠いと

嘆くけど

地上の舟は

今浮上する

『さらば』

 

32.

沸騰する

冬は寂しいよ

立ち竦む

メロディーライン

深夜のライブ

『孤独の泡』

 

33.

粥の湯気

繋いだ手とは

想われず

町のランタン

柔く点いて

『片鱗の夢』

 

 

34.

髪はねて

朝のドライブ

遅刻する

君まぶしくて

鍵は震えて

『朝デート』

 

35.

壁もたれ

希薄なライター

海風に

赤い陽が射す

なにもない部屋

『求めた答え』

 

36.

折れた筆

空は黒い

星すらも

勇気の点描

朝を迎えた

『満開の勇気』

 

37.

熱情を

勘違いした

球児の春

頭上を架けた

行方を知らない

『ファウルボール』

 

38.

夢半ば

山中で死す

侍を

腹切りで知る

彼は果てです

『美人』

 

39.

寝るまでに

幾つ数えて

瞬きを

背中を撫でても

傷は癒えない

『スクールオブスパロウ』

 

40.

幼気な

日本人形

髪切りを

畳に散らばる

彼女は白く

『事後』