短歌41-50

41.

幾つ寝て

あなたの皺を

撫で愛でる

忘れたと酒

僕は注ぐか

『過去を撫でて』

 

42.

星巡る

止まる地球儀

回転を

廻り祈りて

のんきな輪廻

『遅い感性』

 

 

43.

夜枕

何を重ねた

厚い霧

指を束ねて

星を数える

『恋人たちの夜空』

 

44.

早熟の

誰が齧るか

紅林檎

歯型を察し

額冷たく

『かわいや林檎』

 

45.

片隅の

垂れた唇

彼女より

恋の手紙は

赤いポストへ

『唇の形』

 

46.

トカレフ

頭抱える

死の喪服

口内寒く

雪は降らぬか

『彼の葬式』

 

 

47.

輪舞する

揺れるスカート

飛ぶ飛沫

指先辿る

睡蓮のように

『白い踊り子』

 

48.

私たち

紅いステージ

歪む頬

スポットライト

夏の暗転

『夏の終わり』

 

 

49.

瞬きの

枯れた焦燥

目が朽ちる

落ち込んだ朝の

手痛い財布

『貧乏』

 

50.

臆病に

女の髪が

愛しくて

ドアノブなぞり

確認しがち

ベジタリアン