短歌211-220

211

羽音が

頭髪揺らす

目を塞ぎ

引きずり散りぬ

砂穴の蟻

『最高の世界か』

 

212

東北の

貝を乱して

ベンチいぬ

野球帽着て

歪んだ笑みの

『知らない親父』

 

213

肉体の

淡い萌芽に

ささやかな

毛糸のほつれ

淫らな時報

『久方の活動』

 

214

折り方を

知らぬままに

卒業し

色形さえ

甘く淀んで

『折り紙』

 

215

窓越える

紙ヒコーキは

離れない

指の決意を

素直に認め

『私と紙ヒコーキ』

 

216

沼溺れ

生きる心地を

実現し

昨日の夜は

冷えていたから

『不幸と言いますが』

 

217

忘れない

胸の天才

温かく

かき乱された

白さ混じりて

『年月』

 

218

鶴の足

連なる愛歌

認めた

灰にならずに

埃を被り

『過去詩』

 

219

水流れ

色鮮やかに

泳ごうか

ヒレの楔も

癒されたので

『回復』

 

 

220

野暮だなぁ

君の名前を

知る機会

愛しているよ

それで不足?

『無視』