短歌61-70

61.

君たちは

実に豊かで

ヒアシンス

冬を迎えて

太陽昇る

『ヒアシンス』

 

 

62.

窓寄りて

月の吸引

光射す

傾くコップ

瞼抑えて

『月を見る』

 

63.

知り合いの

頬が冷たく

レモンティー

夜の校舎に

お化けは出ない

『不良』

 

64.

夢破る

過去の振動

耳鳴りに

聖夜の灯り

山を見つめて

地震後』

 

 

65.

夕日落ち

目当ての店を

通り過ぎ

いつもの店で

ビールを煽る

『根性なし』

 

66.

迷惑を

掛けてはならぬ

嘘をつき

あなたの目には

僕はいますか

『嘘つきの恋人』

 

67.

嘘を吐き

まくら埋めて

涙尽き

私の答え

あなたの本音

『悔恨』

 

68.

痛いほど

背中寂しく

電話して

皿に水圧

声はやさしく

『電話』

 

69.

布団より

薄ぼんやりと

目を開けて

眠れない夜

君と擬似キス

『LINE』

 

70.

丘降り

廻る車輪

耳ちぎれ

息も絶え絶え

齧られたパン

『急げっ』