短歌131-140

131.

伝えぬと

海の中へと

溺れよう

シヌナシヌナと

生き抜いてやれ

『生誕』

 

132.

白日の

秘密の小指

バラが舞い

清い大人は

日記を書かぬ

『ミステリアス』

 

133.

臆病は

パラリと揺れて

消えちまえ

君は素直だ

笑顔が似合う

『笑う』

 

134.

よろけては

西の山見て

恐怖する

時計は既に

割られて散りて

『戻らない』

 

135.

しゃがみ込み

砂山崩し

夕日浴び

陽炎消えて

影炎上す

『小さな夢』

 

136.

忘れぬと

傷握りしめ

塩生まれ

涙と混ざりて

海に流した

『負の感情』

 

137.

慈しみ

病の風邪を

見逃せない

布団から雨

窓は白んだ

『病の気配』

 

138.

腹が減り

お腹が痛み

腹を切り

腹を抱えて

腹を立てられ

『腹』

 

139.

ゆらゆらと

クラゲのように

泳ぎたい

暑い日差しに

まずい息継ぎ

『クロール』

 

140.

唸るほどに

傷つけずには

いられない

渋い小雪

見えては溶ける

『生きていくこと』