短歌111-120

111.

祈り方

まちがえたんだ

筆をおり

キャンパスは白

消せない白霧

『芸術家失格』

 

112.

夢溢れ

白いカップ

用意して

雫の行方

午後、霧消

午後の紅茶

 

113.

痛みさえ

記憶の続き

日記帳

全部燃やして

つまり私も

焚書

 

114.

君という

文字列すらも

欲情し

深夜の花火

音は響かず

『一人』

 

115.

泡すら

生命の樹

命名

定めた時刻

君を割りたい

『時計』

 

116.

負の愛撫

若葉の誓い

君はクソ

どうして笑う

くたばれ夫

『不倫』

 

117.

紅い目を

愛してるのよ

喉疼く

肩も首まで

全部ください

『仮面舞踏会』

 

118.

雨湿る

苔のダンスを

見たことない

傘が導く

不眠のダンス

『雨降り』

 

119.

白帯を

解けてなびく

蝉時雨

清さを想う

夏のおにぎり

夏の大三角

 

120.

星契り

流星群が

やってくる

僕は死にます

貴方も共に

『運命論』