短歌161-170

161.

目は鱗

海が現れ

水没し

洩れたあぶくに

涙はでない

水没ピアノ

 

162.

体調の

見るまでもない

やさしさに

言葉のナイフ

洗い流した

『調理後』

 

163.

涙は傘

色の無色さ

役立たず

穴に破られ

濡れたらいいよ

『メランコリー』

 

164.

これからを

背中に通し

引き上げて

よだれ垂らして

いただきました

蜘蛛の糸

 

165.

血の涙

沼から見えた

死に舞台

あなたの踊り

Shall we ダンス?

『夢の中へ』

 

166.

消えていた

耳の形見を

思う唄

新しい人

なみだみたいだ

『忘れたよ』

 

167.

臭いナス

地下を走って

秘蔵する

宝は地図に

納めて燃やす

『宝探し』

 

168.

駅前の

人混み抜けて

光射す

神は尊ぶ

君といこうと

『自然体』

 

169.

この国と

見間違えたら

酒溺れ

知らぬ女を

良妻と呼び

『迷い子』

 

170.

如月の

新たな君を

後乱れ

交流すらも

許されぬ毒

『ウイルスパニック』