詞6-10

6『回転木馬

「届くことはない」
届かせたくはない
想いはいつだって僕だけのもの
「かわいい人」
かわいい人形
実感はいつだって傲慢なんだもの
「君はそこにいて、笑っていて」
僕はそこにいなくて、ニヤついていて
君の幻想だけを頭の中で抱きついている
「いつだって素敵な君は僕の初恋の人」
いつだってその程度な君は僕でも愛せるのではないか。
そのような想いが頭の片隅で笑っている
誰を愛したいのか
誰を見つめたいのか
僕は恋をしていた
僕の話に恋してた
あなたがそこにいるのに
回転木馬を一人楽しんでいた

 

7『Shake the knife』
答えを出せない暗い峠で
怯えて影に欲情していた
影は発汗して喘いでいた
お星さまのレーザーを額に浴びて燃えていた
Shake the knife
どのように人を好きになろうと勝手だろう
Shake the knife
たとえ君と心中できなくとも勝手だろう

 

痛みが増してく暗い崖で
辛くて闇に瞬きしていた
闇はドギマギして嘆いていた
オーロラのカーテンを胸に重ねて忘れていた
Shake the knife
どのように人を嫌いになろうと勝手だろう
Shake the knife
たとえ君に嫌悪されても勝手だろう

 

無情に沁みてく暗い空で
寂しくて悪に抱きついていた
悪は笑って曝け出していた
銀河のミルクを喉に飲み込んで覚醒した
Shake the knife
どのように人を忘れようと勝手だろう
Shake the knife
たとえ君を思い出そうとも勝手だろう

 

8『白む金魚鉢』
もう何度目の答えなのか
白んだ金魚鉢に手を突っ込むように
重なった視線の意味に溺れてしまう
大好きだとか一緒に居たいだとか
伝わりようのない答えにつわりが起こりそうだ
いっそのこと僕の印象と同じように
世界が歪みあなたが見えなくなればいいと
祈るのか
誓うのか
違うのか
答えがあまりにも切なくて苦すぎて受け止められない

 

もう何度目の後悔なのか
白んだ金魚鉢に足を突っ込むように
外す視線の切なさに痛んでしまう
触れたいとかキスしたいとか
実行しようのない欲望に身を滅ぼしそうだ
いっそのこと僕の妄想と同じように
あなたが歪み二人が一緒になればいいと
祈るのか
誓うのか
違うのか
答えがあまりにも切なくて苦すぎて受け止められない

 

もう何度目の失望なのか
白んだ金魚鉢に頭を突っ込むように
見逃す視線のわざとらしさに笑ってしまう
なんでもないとか開き直ったりとか
至りようのない明るさに僕が溶けそうだ
いっそのこと僕の絶望と同じように
僕が歪みあなたを見逃せばいいと
祈るのか
誓うのか
違うのか
答えがあまりにも切なくて苦すぎて受け止められない
未だにあまりにも切なくて苦すぎて受け止められない

 

9『経済戦争の果て』

最高の解決がスーサイドだと
誰もが願わずにいられない死刑台
首に肌触りの悪いロープ
機械音声のレクチャー
僕は孤独だ
やってきたしやられてきた
貧すれば鈍する経済戦争の果てに
暴落した貨幣の海に溺れて
僕らは社長の罪をこの首で償うだけなんです

 

10『水鏡』

狂おしくて肘が水星のような頰を圧する
瞼にダムを建設したからお酒を飲むと口から放出する
6割の水分が震えている
ボーと酔わない湿気に嫉妬する
淫らに波紋する水鏡は鼻の高い誠実な君にはどう見えているのか
餅や鏡ならば簡単に割れるのに。拳にガラスが刺さって、血液を壁に伝えても。
水面は激情を誤魔化して微笑むだけで、痛いなんて誰も傷つけない

水は優しいんですね
海も川も池も湖もプールも何処へ行こうと視線を向ける水と出会えることはない
蛇口からポロポロ私小説家の孤独のように溢れるしずく
みんな寂しいだよってよく笑い泣く夕日の影に執着するような17歳の女の子は教えてくれた
好きな人の水分と私の水分が恋人だったらどれほど幸せだったのか
頬を圧して身体が波紋を描いて私そのものが狂おしければどれほど良かっただろう